ちょっと装丁がかっこいい、心理学と心の哲学の本。 著者のハンフリーは、イギリスの心理学者だが、現在は哲学の教授もやっているらしく、この本も心理学者の本というよりは哲学者の本という感じに出来上がっている。 というのは、この本は、心理学の実験結果を単に並べているだけでなく、感覚や意識という概念についての分析を行っているからである。もっともこういう場合、どこまでが心理学者のどこからが哲学者の仕事であるべきかという区別は、本来たてようもないものだろうから、この本が心理学の本か哲学の本かというのも、それほど重要な違いではないだろう*1。 『赤を見る』というタイトルの通り、この本で注目されるのは「赤を見る」ことといった、視覚的な感覚である。そして、そのことを通して意識についての考察を深める。 まずは、盲視や変視症、感覚代行といった具体例を挙げながら、感覚と知覚が違うということが述べられる。 盲視とは、