目次 研究の動機 研究の経緯 楷書の成立 明朝体の成立 漢字字書の恣意性 しんにょうの点の数 しんにょうの画数 標準字体 活字のように書くこと 書の行方 謝辞 ●研究の動機 私は自分でフォント・エディタを作るくらいだから、当然、文字のデザインに関して、強い興味を持っている。さらに、文字自体に対しても、非常に強い興味を持っている。そんな私が最近、漢字に関する論争が盛んになっているのに気付いた。思えば20年以上前に一度、漢字教育を巡ってかなりの論争が起こっていた。読売新聞社から「日本語の現場」[B-1]というシリーズが刊行されたので、ご存じの方も多いと思う。「日本語の現場」は日本語の(特に字形の)揺れと、国語教育の現状について、よく取材してあり、面 白かった。この本はその後の「岩波講座 日本語3 国語国字問題」[B-3]でも参考文献に挙げられていた。 その後、論争は下火になった印象があっ