県内の被爆者が原爆症の認定などを求めた訴訟で、ただ1人原爆症と認められなかった原告の女性(78)が、昨年11月の横浜地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。認定を巡る集団訴訟では、敗訴した原告でも救済される法律が、判決翌日に成立したばかり。それにもかかわらず、高齢の原告が訴訟継続の道を選んだのはなぜか。 (田村剛) 原告の荒木禮子(れいこ)さんは、川崎市川崎区の賃貸マンションに1人で暮らす。 「今でもね、頭の傷がズクズクと痛むの」。被爆時のけがで、右目は視力を失った。昨年、肺と食道に新たながんが見つかり、13日からは川崎市内の病院で入院生活を送る。 14歳の時に広島市で被爆した。爆心地から1・7キロの広島駅構内。重いものが後ろにのしかかるような感触で前にのめり込んだ。目を覚ますと、割れた頭から血が流れ、右目が開かなかった。 数歩前にいた妹は、半身やけどを負い、2週間後に死亡。父親