○本田由紀『教育の職業的意義:若者、学校、社会をつなぐ』(ちくま新書) 筑摩書房 2009.12 今日の厳しい就労環境を生き抜く若者を育てるには、「教育の職業的意義」の再構築が必要だ。これは、基本的には『多元化する「能力」と日本社会』(2005)『軋む社会』(2008)などで、著者が主張してきたことの繰り返しである。 本書の新しさとしては、教育の職業的意義(≒実業教育)をめぐる歴史的な沿革が、詳しく述べられていて興味深い。明治期から第二次世界大戦終了まで、為政者側は「実業教育」の拡充にきわめて積極的だったが、人々の間には「普通教育」への志向が強くあった。また、戦前期の「実業教育」は、体制に奉仕する「臣道実践・職域奉公」的な発想(産業報国運動)と少なからず結びついていた。終戦直後にはこの反動が起きるが、50年代から60年代前半にかけて、経済発展のための政策的要請から、再び「教育の職業的意義」