ブックマーク / academist-cf.com (8)

  • 江戸時代の子育ては育児書の推奨に従っていたか? – 遺跡から出土した骨の安定同位体分析でわかること

    子供観の変化 少子化の現代に暮らす私たちにとって、おそらく、子供はかわいく大切な存在です。ですが、もっと昔、たとえば江戸時代に、子供は社会のなかでどのような存在だったのでしょうか? 現代と同じく大切にされ十分な教育を与えられていたのか、それとも「小さな大人」とみなされて労働などでこき使われていたのか。こうした「子供観」は時代や地域によって変化します。昔の子供観を復元するうえで、歴史学や考古学は大きな役割を果たしてきました。 歴史学や考古学の成果によって、江戸時代の前半、17世紀から18世紀にかけて、庶民の子供観に変化があったことが明らかにされています。経済が安定し文化が成熟したことで、相続をともなう家意識が庶民にも広まり、子供の教育や健全な発達により細やかな注意が向けられるようになりました。その結果、18世紀以降には、たくさんの育児書が広く庶民に向けて出版されるようになりました。また、家意

    江戸時代の子育ては育児書の推奨に従っていたか? – 遺跡から出土した骨の安定同位体分析でわかること
  • 仔犬の骨はおっぱいの夢を見るか? – 古代プロテオミクス分析による1000年前の乳タンパク質の検出

    遺跡からは、数百年からときには数百万年もの長い時間を経た、さまざまなモノが発掘されます。そうした昔のモノには、DNAやタンパク質などの古代分子が意外にも残っていることが、最近の研究によって明らかにされつつあります。ここで紹介するのは、最先端の分析によってどこまで微量の古代分子を検出できるか、という限界を押し広げた研究事例です。生後2週間で死亡した1000年以上昔の仔犬の骨から、驚くべきことに、死亡直前に摂取した母犬の乳に由来すると考えられるタンパク質が検出できたのです。 イメージ画像(東京都文京区の牛天神・北野神社にて撮影) 古代分子の研究の発展 遺跡から発掘された昔のもの(遺物)を最先端の手法で分析することによって、当時生きていた人びとのことやその生活環境を明らかにできます。近年そうした研究が大きく発展しています。古代ゲノミクスはそうした発展の最たるものでしょう。古人骨から解読されたゲノ

    仔犬の骨はおっぱいの夢を見るか? – 古代プロテオミクス分析による1000年前の乳タンパク質の検出
  • ナメクジの出現を予測する!- 市民科学と最新統計の融合

    外来種問題は突然に 2014年7月某日、札幌市の円山原始林で私が出会ったのは、体長15cmもの巨大な豹柄のナメクジ、マダラコウラナメクジでした。私はそれを知っていました。過去に一度だけ、ドイツ・ドレスデンの森の中で見たことがあったからです。北欧原産のナメクジがどうしてここに? 慣れ親しんだ円山の森に現れた、不似合いな新参者との突然の出会いに、目眩がしました。私の知る北海道の生態系は、これからいったいどうなってしまうのか? 我々ヒトの生活への影響は? 体長15 cmほどのマダラコウラナメクジ 市民のブログが教えてくれた 予期せぬ出会いに衝撃を受けた私は、研究室に戻るや否や、飛びつくように現状を調べ始めました。わかったことは、マダラコウラナメクジが2006年に茨城県で最初に侵入・定着が確認されたということ、さらに2010年には福島県、2012年には長野県にも侵入し勢力を拡大しているということで

    ナメクジの出現を予測する!- 市民科学と最新統計の融合
  • なぜ、命がけでフィールドワークをするのか? – ゴリラ研究の第一人者 京都大学・山極寿一総長に聞く

    屋久島でニホンザルの生態調査を行っているグループ「ヤクザル調査隊」が、academistのクラウドファンディングで調査費用を募っている。 ヤクザル調査隊は、1989年に数十人の研究者によって結成された。それから30年間、多数のボランティア調査員の協力を得ながら、屋久島にすむニホンザルの生態や自然環境の移り変わりを調査することで、ニホンザルの社会が長期にわたってどのように変動しているのか、世界的にも貴重なデータが蓄積されつつあるという。 ヤクザル調査隊の調査では、電気・ガス・水道のない屋久島の山の上で、数十人が1週間以上キャンプをしながら生活し、そこに生息しているサルの追跡を行う。今回は、こうしたフィールドワークを実施する意義について、ゴリラ研究の第一人者であり、かつてヤクザル調査隊の一員でもあった京都大学 山極寿一総長に聞いた。 【関連記事】大学というジャングルでフィールドワークをするため

    なぜ、命がけでフィールドワークをするのか? – ゴリラ研究の第一人者 京都大学・山極寿一総長に聞く
  • 屋久島の自然と、そこにすむニホンザルを追い続ける! | academist (アカデミスト)

    おかげさまで、クラウドファンディング開始後18日目の4月5日に、目標額150万円に達しました。4月8日現在、120人以上の多数の方にご支援をいただいています。調査隊OBOGのみなさんの、調査隊への熱い思いを感じると同時に、調査隊にこれまで縁のなかったはずのたくさんの方たちからも、温かい励ましとご支援をいただいたことに、驚いています。ほんとうにありがとうございます。 進捗状況でもご報告しましたが、3月末に、わたしたちが屋久島で使用していた車のうちの1台が故障し、廃車にすることに決めました。残りの車にも、いつ同じことが起こるかわかりません。150万円の目標達成で、1台の車を更新できることは確実になりましたが、2台目の車を更新するため、セカンドゴールとして、250万円を目指したいと思います。 どうぞ、引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。 大塚美穂 1989年に研究者によって結成された「

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  • 「生きているからこそ感じられる魅力を伝えたい」- 日本で唯一の深海生物に特化した「沼津港深海水族館」

    巨大な眼や半透明な身体、するどい牙に、暗闇にキラリと光る発光器ーー。深海にすむ生物は、私たちの想像をはるかに超える興味深い形態と生態を持っている。沼津港深海水族館(以下、沼津水族館)の石垣幸二館長は、「深海生物を生きたまま観察することでその生態に迫り、その姿をみることで深海生物に愛着を持ってほしい」との思いから、日で唯一の深海生物に特化した水族館を運営する。深海生物には、共通する特徴があるのだろうか? またどんな日常を過ごしているのだろう。飼育が困難であることが多い深海生物を試行錯誤しながら育て、日々観察している石垣館長にお話を伺った。 沼津港深海水族館 −−海の生物のうち、深海生物だけが持っている特徴はありますか? ぶよぶよで、水っぽいものが多いのが特徴です。これは深海の生物にかかる水圧にうまく適応するためです。生物の身体のなかで水圧に大きく影響を受けるのは気体の部分ーーたとえば人間で

    「生きているからこそ感じられる魅力を伝えたい」- 日本で唯一の深海生物に特化した「沼津港深海水族館」
  • チンパンジーは「三にして立つ?」- 行動研究から示唆されるチンパンジーの栄養的自立の時期

    旅行で訪れた異国の地で、現地の人びとと交流し、「こんな習慣があるのか」と驚いた経験が、みなさんにもあるかもしれません。たとえば挨拶ひとつとっても、ハグをされたりキスをされたりすると、日で生まれ育った私などは、どぎまぎしてしまいます。そして翻って、挨拶は会釈が基だと、私が当たり前に思って(思い込んで)いたのだと、気付かされます。このように、人は、自分の所属している集団の外に出なければ、自分自身について考え直すことが案外難しいものです。 では、日人という集団ではなく、もっと広く、「人間という集団の外」はどこになるでしょう。その答えのひとつが、ヒト以外の霊長類です。なかでもチンパンジーは、遺伝的に最もヒトに近縁な種であるため、ヒトの進化の隣人として、多くの興味と注目を集めています。私はこれまで、合計で2年近く、アフリカに住む野生チンパンジーの集団を追いかけながら、「人間としての自分」を強く

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  • ゆりかごから墓場まで – 生物考古学が明らかにする江戸時代のあるおばあさんの一生

    生物考古学の発展 縄文時代や江戸時代など、過去の人びとの暮らしや生死を明らかにする研究分野というと、多くの方々は考古学や歴史学を思い浮かべるのではないでしょうか。そうした分野に加えて、生物考古学 (bioarchaeology)という研究分野があります。遺跡から出土した人骨や動物骨の形態を調べたり、DNAを分析したり、化学分析を実施したりなど、生物学や地球化学の手法を主に利用して、当時の人びとの生死、性、健康状態、集団構造など、考古学や歴史学上の研究課題に答えようとする分野です。 生物考古学の特徴のひとつは、そのアプローチの多様さです。ほかの分野の最先端の分析手法によって得られた知見を、考古学や文献史学の情報と組み合わせることで、従来の研究よりずっと鮮やかに、多方面から、過去の人びとの生き様を復元できるようになります。 今回、私たちは、同位体分析という手法を適用することにより、江戸時代の

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