『赤本再興《あかほんさいこう》〇花咲き爺《じじ》』[式亭三馬補綴、歌川国丸画、文化九(一八一二)年刊] ※この記事では、国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜加工して使用しています。 赤本花さき爺 - 国立国会図書館デジタルコレクション 花咲ぢゝ 3巻 鰻谷劇場条書 3巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】 ①正直夫婦ハ、寵愛《てうあい》の福犬なれバ、貸し憎ゝ思へども、物事逆らハぬ生まれ付き故《ゆゑ》、慳貪爺《けんどぢゞ》に貸してやる。 ②「大切の犬なれど、貴様《きさま》ぢやから貸して進ぜる。随分《ずいぶん》気を付けてたもれ」 ③「どふぞ早く返して下され。福が戻らぬ内ハ、夫婦共に安堵《あんど》しませぬ」 ④「どうやら福めハ行《ゆ》きともない様《やう》に見えるぞや」 ⑤福犬、別れを惜しミて、尾を垂れ歩ミ兼ねるを、慳貪爺、無体《むたい》に引き摺《ず》り行く。 ⑥「貴様ハ欲が無