燻ぶっている人間 周囲の人々を見下す人間はどこにでもいるのですが、その手の人間は殊のほか自分の評価を気にします。他人は他人、自分は自分、と考えることが出来れば、どれほど気が楽になることだろう – そう思いながら、私は、その二年か三年先輩のSさんを諫めることも無く、距離を置いていました。 Sさんとは一緒の部署になったことはありませんでしたが、何度か仕事でのつながりがありました。彼は目下の社員に仕事を押し付け、自分は手を動かすことをしないタイプでした。そして、時折、用も無いのに私の部署に来ては、如何に自分が出来る人間かを喧伝するのでした。 一度、私が〆切の近い仕事をしていた時に、Sさんがいつものようにふらっと現れました。そして、いつものように、自分はこんなところで燻ぶっている人間ではないと言った時、たまたま私の虫の居所が悪かったのでしょう。私はSさんに、「十分燻ぶっているように見えますが」と言