母の月命日に納骨塚に集合して父娘で般若心経を唱えるという、異次元の珍妙エンタテインメントを実施するようになって三年目である。 未曾有の大寒波が来ている中、いつものように霊園に向かうと、老人は私が昨年末に編んで渡した真紅のマフラーを巻いてそこにいた。 「長いマフラーもいいな」 とあんまりストレートに礼を言うのも照れるのか老人は言う。 「うん、あったかいでしょ」 「あったかいのもそうだし、顔にも巻けるから。銀行強盗もできるだろ」 「……?」 ギャグなのか、色々気を使おうと考えた末に着地点で足がもつれたのか、もはや私には判断がつかないが一応喜んではもらったようで良かった。 仲良くはないが、仲悪いわけでもない血縁者ってのも図り難くて面白いもんである。 「まだストーブなしで暮らしているのか」 よほど驚くのか、父は冬に私にあうと決まって同じ質問ばかりする。 我が家も厳密にいえば、どうしても洗濯物が乾か