1976年、コロンビアの考古学者たちとガイドの一団が、過酷な任務に出発した。目的は、古代遺跡を盗掘者から守ること。コロンビア北部、カリブ海沿岸に近いシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタの深い森に覆われた丘陵地帯を、一行はなたを振るいながらじりじりと進んだ。 この地域にはかつて、タイロナという先コロンブス期の文明があり、16世紀にスペインに征服されるまで、数世紀にわたって栄えていた。探検チームが入ったのは、道路で結ばれた見事な集落が次第に発見され、発掘、記録、研究が行われつつあるころだった。歩き始めて数日たつと、いずれもコロンビア人類学研究所所属の考古学者たちは、疲労の色が濃くなってきた。密林の中を延々と歩く厳しさに加え、猛烈な暑さ、激しい雨、虫刺されで消耗していた。(参考記事:「南米の高地で世界を守る」) 任務は急を要していた。考古学的遺物を盗掘する「ワッケーロ」たちが大規模な史跡の存在を知