あの人が今生きていたならば、この世界を見て何を思い、どのようなヒントを与えてくれるのだろうか。かつての大混乱時代を生きた政治家や科学者、文学者など各分野の偉人たちの思想を、研究者・識者に聞く。第1回の偉人は小説家・安部公房。 小説「砂の女」をはじめ数々の名著を残した安部公房。どの国や民族にも属さぬ無国籍的な世界観を描きつつ、理系的な視点から分析的な表現に徹した作品は、今なお多くの知識人を魅了する。 実は安部公房、今から60年ほど前から、AI(人工知能)に似た、自ら考え進歩する機械を作品に登場させている。そして、それらの存在はどれも、最終的に人間を苦しめる悪として描かれている。 今やAI技術が世界中で必需品となりつつある。一方で、人間のコントロールを超えたテクノロジーの進歩に、脆さや危うさを指摘する声は思いの外少ない。安部公房ならば今のAIの台頭を見て何を思うのか。安部公房研究の第一人者であ