この連載「イスタンブル便り」では、25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わりのなかで実際に経験した、心温まる話、はっとする話、ほろりとする話など。今回は、東西文化の要衝地ならではの食文化について紹介します。 >>>バックナンバーから読む「ねえ先生、うちのおじいちゃん、あのベトナム料理の、生春巻きにはまっちゃって、『ほら、お前がこの間作ったあのサルマ(葡萄の葉でお米を巻いたトルコ料理)が食べたい』なんていうんですよ。」 講義の休憩時間にそんな話をしてくれたのは、大学院修士課程で私が論文指導をしていた学生、ブシュラーだった。コロナがようやく下火になって、マスクをしながらだが対面授業になってすぐの頃だったから、2年くらい前だろうか。 それを聞いて、隔世の感に捕