7月8日、「第27回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」の前夜祭として、日本が誇る人形アニメーションの巨匠・川本喜八郎監督の新作長編『死者の書』のワールドプレミア上映が行われた。 『死者の書』は70分の長編人形アニメーション映画。奈良時代、仏教という新しい文化に魅せられた一人の聡明な女性が、現世への執心ゆえにさまよう大津皇子の亡霊と出会い、互いに惹かれ合うという物語だ。 それぞれに強い一念をもって通じ合う男女の生死を超越した交感。そして、大陸渡来の仏教文化と大和文化がせめぎあう時代の空気。このふたつが縦横に絡み合い、スリリングな緊張感をもって物語が紡がれていく。恐ろしくも美しい、神秘的なラブストーリーでありつつ、また優れて深遠な社会学的考察でもあるという、見応えたっぷりの意欲作である。 陰影に富んだライティングの美しさや、的確な映画演出は揺るぎなく健在。夜、姫の寝所に亡霊がやってくる場面