ロシアが天然資源の輸出から得ている多額の収入は、ウクライナ侵攻をはじめとする活動に充てられているが、一部は国内のテクノロジー分野に流れ込み、地政学的に東西の経済の分断を促している。 この東西対立から最大の利益を得ているのは首都モスクワ、とりわけIT業界だ。ロシア国営タス通信によると、昨年、モスクワに流入した年間投資額は官民合わせて735億ドル(約11兆円)に上り、さらに増加し続けている。こうした地理的な経済の影響は、21世紀の地政学情勢と世界の勢力均衡に依然として変化をもたらしているが、西側諸国の政策立案者の多くはこれに気付いていないかもしれない。 ウクライナ侵攻を契機に西側諸国が科してきた対ロシア制裁の限界は、この情勢に直接影響を与えている。フィンランドのシンクタンクCREAによると、ロシアは2022年以降、石油や天然ガスなど化石燃料の輸出から約7420億ユーロ(約121兆円)の収入を得