名著『逝きし世の面影』の著者、渡辺京二さんの『無名の人生』が8月20日の発売直後から話題となっている。「成功、出世、自己実現などくだらない!」と断言する、渡辺さん流の「人生論」「幸福論」。自身のことを語るのを好まない渡辺さんの著作としては、異色の本だ。この本が話題となっていることをどう思うか、渡辺さんにあらためて聞いた。 ――渡辺さんは、この本で「生きづらい人びとにエールを送りたい」とおっしゃっていますが、何が現代人を生きづらくさせているのでしょうか? 今の世の中は、いろんな面で、豊かで、自由で、ルーズになっています。 「文明」というものは、生きることが、快適であるとか、楽であるとか、そんなに苦労しないで済む、という方向に発達してきました。 人間関係のあり方にしても、そうです。 嫌なしんどい人間関係から逃げるのも比較的容易になりました。もちろん、大企業に勤めたり、公務員になれば、安定した待