「今世紀最大の天才」。自身をそう呼ぶ奇書は、しかし、250万部超の歴史的ヒットになった。30年前に出た松本人志『遺書』(朝日新聞出版、1068円)だ。 「ハッキリしようではないか。誰が日本一おもしろいのか?」一芸人として無双した彼は、芸をめぐるルールに手をのばす。「コメディアンも全部集めて、ネタで正々堂々と勝負し」ようという提案は、のちのM-1やキングオブコント。「大喜利という手もある。同じお題で、アドリブの勝負」はIPPONグランプリを予感させる。どれも派手なセットや演出がいらず、誰でも真似(まね)られる。男子校の教室的な発想だ。毎ページ止まらない下ネタや暴言も男子校の休み時間のようである。 芸で戦うプレイヤーから、芸という情報を制作し流通させるルールを握るプラットフォーマーへ。プレイヤーはいくら優勝してもプラットフォーマーに勝てない。ユーチューバーがいくら数字を取ってもGoogleに勝