<流行りの表現を借りれば「しくじり先生」。アルコール依存やドラッグ依存に苦しんだアメリカの人気作家、オーガステン・バロウズが自己啓発書を書いた。「自分を憐れむには」「癒えないままで生きるには」「子供を先立たせるには」など、体験に裏打ちされた重みのあるバロウズ流アドバイスとは> 父親はアルコール依存症、母親は統合失調症。12歳で保護者を失い、アルコール依存とドラッグ依存に苦しんだ末に、若き日々の特異な体験(年上男性との関係を含む......著者はゲイだ)を赤裸々に綴った回想録で一躍、時の人となる――。「まるで映画のような」という決まり文句が見事に当てはまるのが、オーガステン・バロウズの半生だ。 実に3年にわたってニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにラインクインした回想録「Running with Scissors」(邦訳『ハサミを持って突っ走る』バジリコ刊)は、もちろん映画化された。
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ 本サイトではこれまで貧困と格差というテーマに取り組んできたが、特にルポライター鈴木大介氏による『最貧困女子』(幻冬舎新書)や『最貧困シングルマザー』(朝日文庫)は大きな反響を呼んだ。それは、こうした作品が従来の風俗ルポや貧困本にない視点をもっていたからだろう。 これまでタブーとされてきた貧困女性とセックスワークの関係、その背後にある搾取、さらに貧困の陰にうつや統合失調症などの精神疾患や発達障害、知的障害があることを明らかにしたのだ。しかも、単に興味本位で取材をするのでなく、彼女たちと同じ目線に立って、時には取材対象である女性たちに生活保護を受給できるよう説得し、動く。決して上から目線の“取材者“ではなく、時に絶望的な状況や、誰ひとり救えない自分の非力を嘆く鈴木氏の筆致には貧困への憎しみ、
とても刺激的な映画を観(み)て、本を読んだ。たまたま同時期に公開/出版されたものにすぎないが、両者を並べて評してみたい。 映画は森達也監督の「FAKE」。佐村河内守氏を取材したドキュメンタリーだ。一昨年のゴーストライター騒動−−聴覚障害者で現代のベートーベンとも呼ばれた著名作曲家に、実はゴーストライターがいた。本人は楽譜も書けず、耳もよく聞こえると告発されたのだ。ワイドショーや週刊誌で袋叩(だた)きに遭い、マスヒステリーの様相を呈した。 騒動は完全に消費され、その後、佐村河内氏は沈黙を貫く。「FAKE」のカメラは、妻と猫と引きこもる自宅室内へと侵入、佐村河内氏の肉声を伝える。出演依頼に訪れるテレビ関係者の滑稽(こっけい)な態度、追及する外国人ジャーナリストとの緊迫したやりとり。「A」や「A2」でオウム真理教の内部から外へとカメラを向けた森監督の卓抜した手腕は存分に発揮される。だが、それだけ
ツイッター上で「ホラーすぎる」「一生トラウマになる」と話題になっている絵本があります。クレヨンハウスから2003年に出版された「わかってほしい」です。表紙に描かれたクマのぬいぐるみが、ページをめくるたびにボロボロになっていきます。「にくいんだろ」に対して「ここしかないから」とか、「しんでびびらせるか」に対し「でも あきらめない」など、相反する二つの感情がそれぞれ白と黒の文字で重なるように書かれています。ただ「怖い」というだけで拡散させている人もいますが、この絵本が伝えたいテーマは「虐待」です。20歳まで父親から虐待を受けていたという作者に話を聞きました。 【画像】絵本の中身はこちら。クマが無残な姿に変わる様子や「しんでびびらせるか」「あいされたい」など 真っ赤な表紙に白抜きの文字で「わかってほしい」。最初のページには、こう書かれています。 「この本を書いたのは 虐待が少しでもなくなればと
京都、とりわけ「洛中」の人ならではの気質を皮肉を込めてつづった「京都ぎらい」(朝日新書)の売れ行きが好調だ。物議を醸しそうなタイトルに込めた思いは何なのか。京都出身の著者、井上章一・国際日本文化研究センター副所長(60)に聞いた。 「京都にはいやなところがある」 同書は冒頭からそう宣言する。その理由として井上さんが指摘するのは、洛中の「中華思想」だ。 「洛中」は上京区、中京区、下京区といった京都市の中心部を指す。「洛外」である嵯峨(右京区)出身の井上さんは、一部の洛中の人たちに田舎者扱いされてきたという。洛中出身の著名な仏文学者とのやりとり、宇治市出身のプロレスラーの凱旋(がいせん)興行でのエピソードで、洛中人への嫌悪感をにじませる。 「洛中には『関東へ下る』という言葉を使う人が今でもいる。(いまだに)こういう言葉遣いをするのは、みっともないと思うんです」 専門は建築史。本書は言わば「余技
ノンフィクションライター中村淳彦氏の著書『ルポ 中年童貞』が話題だ。本書によると、30歳以上の未婚男性のうち4人に1人が女性(セックス)を知らないという衝撃的な数字まで出ている。知れば知るほど他人事とは思えないこのテーマについて、男女関係論専門のコラムニスト・勝部元気氏と、中村氏が対談する。 勝部:中村さんの著書『ルポ 中年童貞』を興味深く読ませていただきました。中村さんが本のなかでクローズアップした部分と、私がいま、問題意識を感じているところは非常に近い気がします。 中村:ありがとうございます。「近い」というのは、具体的にどんなところですか? 勝部:私はジェンダー論やコミュニケーション論、現代社会論などを斬り口にして、主に男女関係に関する事柄を専門に言論活動をしているのですが、たとえば取材や調査でのインタビュー、講演後の交流といった場面で、10代後半~40代あたりの男女の生の声によく触れ
サイコパスの研究者が、サイコパスであったーーこの衝撃の事実を皮切りに物語は始まる。科学者視点による所見と自分自身のこれまでの体験、二つの視点が交錯する中で際立っていたのは、両者の間に大きな乖離が存在するということであった。 サイコパスの定義とは今日の科学の進展をもってしても、未だ不確かなものである。一般的に「精神病質」と表されるサイコパスの特徴は「平板な感情の動き」に代表される対人関係における共感性の欠如である。映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に登場するレクター教授のような、古典的なサイコパス像を思い出される方も多いだろう。 だが決して凶悪な殺人犯だけを指すわけではなく、人を思い通りに操縦しようとしたり、嘘に長け、口がうまく、愛嬌たっぷりで、人の気持ちを引きつけたりといった特徴も含むものとされる。むろん著者は人殺しや危険な犯罪を犯したことなどなかったし、それどころか科学者として成功し、幸
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