取材ノート ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。 それまで穏やかだったシアヌーク殿下の声が、突然、一オクターブ跳ねあがった。 「アメリカ・ハズ・ネバー・アンダーストッド・カンボジア!アメリカ・ハズ・ネバー・アンダーストッド・インドチャイナ!」(「アメリカは一度もカンボジアを理解したことがなかった!アメリカは一度もインドシナを理解したことはなかった!」) 第三次インドシナ戦争ともいわれたカンボジア紛争が13年近く続いて、やっと和平が成ったのが1991年10月。それから一年足らずあとのある夜、新生カンボジアの暫定的な政府、最高国民評議会(SNC)の議長をつとめていたシアヌーク殿下が、アンコールワットに近いシエムレアプ郊外の王室離宮の一室で、わたしを含む日本の研究者5人との懇談に応じた。 「新しいカンボジアはアメリカにどのような役割を期待しま