「言葉は、現在、危機的状況にある」 これは本書『頭の悪い日本語』のまえがきで登場している一節です。過剰な言葉狩りや差別語狩りを行う、誤用されている言葉を使い続け、異論があっても議論せずに言葉の意味を大衆の誤用に合わせたものに塗り替える、という姿勢を批判したものです。 時代の変化と共に言葉が変化していくのはある程度仕方のないことですが、最近では新聞やテレビ等のメディアの中に上記のような姿勢が広がっており、筆者はそのような潮流に警報を鳴らしています。 その一例として筆者は「看護師ファシズム」を挙げています。 「それまで法令上、男は看護士、女は看護婦だったのを、看護師に統一するとなったとたん、別に誰も『看護婦』が差別用語だと言ってもいないのに(私の知る限り)、突如として、新聞、テレビのみならず、一般書籍でまで、『看護婦』が『看護師』に変えられるという異常事態が発生した」(『頭の悪い日本語』より)