早川和夫先生の最新作、『居住福祉社会へ』(岩波書店)を読んだ。早川先生は、建築学の観点から、日本の住環境の貧困さ、劣悪さを論じるだけでなく、「住まい」の環境の向上と住居の公的保障こそ、社会保障の基盤である、と唱え、「居住福祉」という概念を提唱した第一人者である。今回の一冊は、その早川居住福祉学のエッセンスを詰め込んだ、集大成であり、かつ入門書の役割も果たす、お得な一冊。 今回、この本を通じて初めて知った事実として、1961年のILO(国際労働機関)による「労働者住宅に関する勧告」がある。これは、早川先生によれば「労働者の拘束的役割を果たす『使用者による住宅の供給』の禁止と社会的責任による住宅供給を満場一致で採択した」(p115)ものであった。これは簡単に言えば、社宅の禁止を求める勧告である。なぜ、社宅が問題なのか。それを、早川先生は、イギリスのホームレス支援団体「シェルター」の報告書を解説