マグロにウナギ。乱獲されているので、食べられなくなる。このように煽(あお)る、資源危機説をよく聞くようになった。 だが、漁業問題の本質はいつも骨抜きにされている。その虚妄を突いたのが本書である。魚が絶滅する前に、魚を食べる人が絶滅するのだと。 日本では四季に適した魚食文化が発展し、自然の摂理に対応した流通機構が形成されてきた。その核となるのが卸売市場の中に備わる「目利き」なのだが、それが価格破壊と効率を追求してきた流通革命により弱体化し、国民は美味な魚に出会えなくなり、このままでは漁業から享受してきた自然の恵みの豊かさを失うという。しかも、魚のブランド化や認証制度、政府が推進している魚食普及対策も悉(ことごと)く的が外れていて、魚離れの傾向はさらに悪化すると示唆する。よくある「漁業国ノルウェーに学べ」は論外だとする。 「魚を食べる人が絶滅」は誇張だが、本来の魚の良さが伝わらない流通になって