「民を救う」という思想 本書は、米国の日本思想史の第一人者が本格的に取り組んだ日本の民衆思想史。 近世からの民衆の底流にあった経済思想をまとめたものだ。 元来、経済とは「経世済民」であり、「民を救う」という意味が包含されていた。農山漁村でよく見られる「講」は正にそれである。「講」は小規模ながら「不測の際の出費に備える」ための金融機関的な仕組みであり、飢饉(ききん)が多発した近世に民衆のなかで生まれ、発展してきた。無尽講、頼母子(たのもし)講、もやいなどである。 本書を読み、強い関心を抱いたのは、近世ではこの「講」が民衆の投資先であったという理解である。識字率が高く、契約が民衆の中でしっかりと行われていたことから、「講」の信用度が高く、確実に利益を生み出していたためだという。そもそも、貨幣をため込んでも、社会は停滞する。ならば「講」に貨幣を預け、必要な時は「講」から貨幣を借りて働き返せばよい