ローズとカブレラの両選手が五十五本。バースが五十四本。落合が五十二本▼日本プロ野球のシーズン最多本塁打の記録を見るにつけ、王貞治選手の五十五本塁打(一九六四年)というのが野球の神さまがこしらえた、高い壁になっていたように思えてくる▼五十五本に近づき、並ぶことはできる。が、追い抜くことができない。最多本塁打はバレンティンの六十本(二〇一三年)だが、どういうわけか、それは別の話となり、五十五本を超えるかどうかが話題となる▼ヤクルトスワローズの村上が五十六号を打ち、王さんの記録をついに抜き去った。「村神様」も五十五本を超えることにプレッシャーを感じていたのか、足踏みが続いていた。九月十三日の五十五号以来、六十一打席ぶりの本塁打。大飛球が意地の悪い野球の神さまをねじ伏せた。シーズン最終戦の最終打席での達成とは、心憎い▼五十五本というのは偉業であると同時に日本人にとって「郷愁」の数字でもあるのだろう