「なぜ景気が悪い時代に、東京ではバブル以上の大規模再開発が出現するのですか?」 建築家・隈研吾はある日、素人代表・清野由美に問われ、言葉に詰まった。「失われた10年」を経て、社会が暗く停滞するにもかかわらず、東京では前代未聞の超高層ビルがにょきにょきと出現中だ。その実体のない高揚。複雑怪奇なねじれ。一体、今の東京で何が起こっていのるか。汐留、丸の内、六本木ヒルズ・・・核となるスポットを歩きながら、二人は東京再生をめぐる“思考錯誤”を繰り広げる。 第8回・「見識」「教養」「土地」「お金」が揃った代官山の奇跡 清野 今でもヒルサイドテラスと、それを設計した建築家「槇文彦」(注4)の名前は、建築科の学生にとってあこがれの的なのでしょうか。 隈 それは依然としてそうですね。 清野 理由は何なのでしょうか? 隈 建物がヒューマンスケールで、がつがつしていなくて品がいい。 清野 ほんの一言で終