近年、世界的に社会貢献を打ち出す企業が増えてきた。株主の利益だけを追求するのではなく、地球環境や格差縮小に貢献することを前面に掲げ、直接利益にならない「社会正義」を実践する企業が増えてきているのだ。本書ではそれをウォーク資本主義と名付けている。私はそれを「偽善」だと思っていた。温室効果ガス削減を叫ぶ企業のトップが下駄(げた)代わりにプライベートジェットを乗り回していたり、格差是正を訴える企業が、途上国の労働者に低賃金・長時間労働を強いる低単価発注を繰り返しているからだ。 ただ、同時に私は偽善でもいいじゃないかと考えていた。偽善とはいえ、人と地球を守る活動にいそしむことは、利益の追求だけを考えている企業よりも、ずっとましだと思っていたのだ。本書の主張は、私のそうした理解を根底から覆した。 マルクスは、「資本は増殖し続ける価値だ」と言った。カネを増やすことだけを考える経済主体が資本家であり、株
![<書評>『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』カール・ローズ 著:東京新聞 TOKYO Web](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/ee089dea66a17ce950fc748d526497b72f9e86ed/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fstatic.tokyo-np.co.jp%2Fimage%2Farticle%2Fsize1%2F2%2F3%2F2%2F3%2F232339b6989be491cc92183360d53e03_1.jpg)