20代の大半の時間を殺人事件の取材に費やした。新入社員だった22歳の時、会社にいる人がみんな育ちの良いインテリばかりだったことに衝撃を受けた。「毎日勉強すれば、映里ちゃんも30歳になる頃には追いつけるよ」というアドバイスをしてくれた先輩もいたが、自律できなかった私は野生の自分を野放しにして暮らした。 14歳で、はじめて深刻な精神的危機に直面し、肉親に刃物を向けてから、私は一般的な倫理の線引とは無縁に過ごしてきた。自分はいずれ、何かをやらかすだろうと思っていたし、そんなことは疑う余地もなかった。 結局、運が良かったのだとしか言いようがない。 私が今に至るまで、親やきょうだいを刺したり、自殺を図ったり、シャブ中になったり、売春をするなどの自傷行為に及ばずに来ることができたのは、一人の女性との出会いがきっかけだ。私には社会人になってから、実母ではなく、私を育て直してくれたもうひとりの「母」がいる