大晦日に熱を出す。りんごの白ワイン煮を作ってもらって食べて甘酒を飲み、ソファーでうとうとしながら「群青戦記」を読んだ。ずっとラジオを聴いている。明日からはちょっと忙しい。
大晦日に熱を出す。りんごの白ワイン煮を作ってもらって食べて甘酒を飲み、ソファーでうとうとしながら「群青戦記」を読んだ。ずっとラジオを聴いている。明日からはちょっと忙しい。
じいちゃんが、昨日の夕方に旅立った。 この一年近く、子供の頃と同じくらいしょっちゅうたくさんじいちゃんのそばにいた。ラッキーなことに私は仕事を減らし、時間だけはたくさんあった。 じいちゃんは車いすにも座れなくなって、声も出なくなって眠っていることも多かったけど、でもじいちゃんはいつだって新しかった。 私が持っていったバムとケロの絵本を気に入って、音読すると興味深そうに目で絵を追っていた。 ママが持ってきた世界の美しいお城の写真集もずいぶんぶあついのに最初から最後までページをめくってもらってずっと眺めていた。 ミイラの飛び出す仕掛け絵本に目を丸くしていた。 じいちゃんは絵を描く人だったから、塗り絵帳を開いて色鉛筆を渡すと震える細い手で、すっすっと線を引いた。 「またね。また来るね」 と言うと、頷いた。 元日の朝、会いに行った時に「じいちゃん、お年玉ちょうだい」と私が言ったら目を見開いたのがお
「楽しければ笑う」と私は言い放った。 言ったそばから後悔したけれど、でももう言ってしまったし、どちらにしろそれは本当のことだから仕方なかった。 「その目付き」 と、子供の頃からママもパパも言った。時々うんざりしたように。わからないのは、私に流れているのは自分達の血だというのに、見たこともない生き物を見るような顔をして私を見ていたことだった。押し黙ったまま、私は何時間も口をきかず、立ち上がることもしなかった。 「その目付き」と、ユークも言った。 恋人だった人たちはその言葉を言ったり言わなかったりした。 言わなかった恋人に、もしかしたら私は最初から最後までとても優しく礼儀正しく接していたのかもしれないし、もしくは私の表情になど興味がない男の人だったのかもしれない。 言った恋人のことはとても好きだった。優しかったり変わっていたり情けなかったりいい匂いがしたりした。とても好きでいる以上、相手を憎む
村は小高い丘を囲むようにして作られていて、家々を眺めながら坂道をのぼっていくとほとんどの村の頂上には古い教会があるのだった。それらのほとんどはもう使われなくなっていて、朽ちていく建物の周りを草や花が覆い、のんびりとした猫がいる。今も昔も、あまり変わっていないんだろう。見おろすと、新しく建てられたのであろう、それでも軽く100年は経っているどっしりとした教会と赤茶色の屋根が続いている。いい風が吹いて、猫が目を細める。どこにいても忘れられないことがあり、私の中でそれらが朽ちるにはまだ早いのだろう。 「じろちゃん、おいで」 とユークが言う。 「次のバスが来るまでワインを飲もう」 と。坂をくだって行った先に小さなカフェがあった。 猫にさよならを言う。
中古のカメラをひとつ買った。 ちゃんと写るのかはわからないけれど、可愛かったので。 外を歩きながらぱしゃりぱしゃりととりあえず何にでもシャッターを切る。ハーフサイズカメラなので27枚撮りのフィルムは倍の54枚撮れることになるらしい。よくわからないけど。 見たものすべてを記憶に残しておこうなんて欲張りかな。 ふとした時に思い出して喉の奥が詰まるような感覚になる。 でも全部望もうとなんて、私は本当にしていたかな。 冬がもうすぐ終わる晴れた日の午後、離れなければ優しくなれないなんてもったいないと思った。 冷たい空気もすぐそこまで来た春も、分けあいたい。 それが、全部ということか。
少し熱っぽいなと気がついたとたん、体がことんとスイッチを切ってしまう。 眠いの何も考えたくないの眠れないの頭が痛いの。 子どもみたいにぐずりそうだ。 職場でオープン記念にたくさん届いた花を分けてもらい、持ち帰る。 ユークがいくつかのコップやグラスや瓶に花たちをそれぞれ生けなおしてくれた。 エンゾと山椒が嬉しそうに寄っていく。新しいものが、猫たちは好きだ。 「綺麗だね」と言う。 枯れていくのを見たくないなんてつまらないことは言わない。
「じいちゃん、笑って」 と言うと、 「おう」 と答えてにっこりする。 じいちゃんのこの眉をきゅっと寄せた笑いかた、大好き。 「じいちゃん、元気」 と聞くと、 「そうだな」 と頷く。 じいちゃんに聞いてみたいことがたくさんある。 じいちゃんはいつだって何でも知っていて優しくてかっこいい。私がまだ中学生だったときにじいちゃんの半蔵門の会社の近くのフレンチレストランで「肉料理にはワインだな。秘密だ」と言って赤ワインを飲ませてくれた時は、嬉しかった。じいちゃんに似合う、じいちゃんに恥じない人になりたいと20年も前から思ったままだよ。 もっともっとずっと一緒にいたい。 話をしたい。
今年の桜味の食べ納めは、マユールのかき氷。 夏が来たみたいな、少し腕が汗ばむみたいな気持ちになったけれど、実際にはまだ風は冷たい春のそれなのだった。
私は坂田靖子の漫画で育ってきたと言っても過言ではないんじゃないかと思う。 新刊が届いた。 ゴブリンズライ。 よつばと!の時と同じで楽しみすぎて、やっぱりまだ開けない。
大好きな「よつばと!」の新刊が本当に嬉しい。 2年以上も待ったので早く読みたいけど、読んでしまうとまた何年も待たなければいけないとわかっているから、ページをめくる指が躊躇する。 最近、夜になるとキラカラと音を立てて家の近くを歩く人たちの音が聞こえてきて、たぶん火の用心だと思う。聞こえるだけで見たわけじゃないからわからないけど。 なんだろう、あの楽器。 カラカラカラ、キラカラカラ。 練り歩く氷を転がすみたいな音。 あぁ、また行ってしまった。
いつもではないけれど、時々気が向いたらお互い相手へのメモを書いて貼っておくことがある。 「コーラ買ってあるよ」とか「おかえり。先に寝てるね」とか。それらをテーブルのはじとか冷蔵庫の扉とかにぺたっと貼っておくのだ。 今回引っ越してちょっと広くなったので壁ぜんぶが掲示板みたいになった。
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