体に良い成分を多く含んだトマトや、可食部分が多い肉厚なマダイ。最近ニュースに登場したこれらの食品は「ゲノム編集」と呼ばれる新しい遺伝子改変技術で開発された。使い勝手の良さから、遺伝子の働きを調べる基礎研究や農水産物の品種改良の分野に急拡大しているこの技術を、人の病気の治療に生かす試みが進んでいる。 開発が先行しているのは、患者の体から細胞を採取し、遺伝子を操作した上で患者の体に戻す手法。さらに挑戦的な試みとして、治療用の物質を注射などで患者に直接投与し体内での遺伝子改変を目指す手法も登場している。この直接投与による治療法で昨年、米国の企業が臨床試験(治験)で有望な結果が出たと報告した。 がんをはじめ、遺伝子に原因がある病気の新たな治療法になると期待される一方、困難な課題もある。専門家らに取材した現状を報告する。(共同通信=岩村賢人) ▽案内役とはさみ 最初に、ゲノム編集技術とはどんなものな