「知らないこと」は「必要ないこと」か ロバート・リケット◎文学科助教授 はじめに 他者・他民族への理解は、たとえ小さなことであっても、「知る」ことからはじまります。その一歩さえ踏み出せない、いや踏み出させない「われわれ」。 「わたくし」を包摂する「われわれ」、「われわれ」 の中で揺れ動いている「わたくし」、「わたくし」の中の「われわれ」。人生をほぼ半分に、日本とアメリカに分けて生きてきた僕は、「わたくし」と「われわれ」を区別する難しさをつくづく感じます。 しかし、事情によって、場合によって、両者の区切り方によって、「われわれ」に入らない、あるいは入れてもらえない「わたくし」もいます。障害、性別、人種、民族、国籍などとなると、この線がよりはっきりと引かれます。 民族と国家の場合には、国家のあり方や社会・経済体制にも、もちろん原因がありますが、それ以上に、他民族への抑圧を通して形成されてきた自