1 はじめに 本書を評する前に、この分野に馴染みのない方のために、論理学(logic)あるいは数理論理学(mathematical logic)がどのような学問分野であるかを紹介する。 我々は日常生活の中で「〇〇さんの話からはその結論は出てこない(あるいは出てくる)」とか「××さんの話からは矛盾が出てくるから、××さんの話は成り立たない」と言うことがある。また、学問的研究の中では例えば、自然数論の公理から「$3$以上の$n$について、どんな数$x,y,z$をとってきても$x^n+y^n\neq z^n$」という定理が導かれるか否かが論じられる。我々が日頃行う“特定の諸前提からある結論を導き出す”という論証活動あるいは証明活動には、その帰結関係を特徴づける何らかの基準があることが窺える。ではその基準とはどのようなものだろうか。また、その基準を満たす論証は一般にどういった性質を持つだろうか。論