書籍の世界に劇的な変化が始まっている。中世ヨーロッパで誕生したという、紙に印刷された本という形が、電子書籍に変わろうとしている。小説もノンフィクションもネットからダウンロードして、専用端末で読書する時代が到来したのだ。この革命的な変移によって、出版社、印刷会社、取り次ぎ、書店が構築してきた従来の構造は、生き残りを賭けた再構築を迫られている。 果たして、紙の本は、Kindle(キンドル)やiPadといった電子書籍に駆逐されるのだろうか…。 新しい価値観の台頭には必ずといっていいほど、バック・ラッシュが付きものである。手軽さだけが本ではない、と本造り職人たちの反動の声が聞こえ始めたのだ。そのうちの一人にお目にかかることにした。彼は半世紀ものあいだ、手業で本を造り続けてきた製本職人である。その職人との対話で見えてきたのは、意外にも、紙の本の復権であった。職人は、本が物としての輝きを持っていた時代
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