ある地域をある国の領土として認めるかどうかということと、その地域に先住していた人たちの権利をどう考えるかは、当面はまったく別のことだ。 たとえば、ぼくは北海道を日本の領土であると思うが、日本が先住者であるアイヌの人たちを迫害し、その権利を否定して略奪を行ったことは、明らかな事実だ。 なかでも、最大の侵害は、たとえば「権利」とか「所有」とか「独立(国家)」といった近代的な概念を押しつけて、その枠の中でしか自分たちが当たり前に生き抜くための主張を出来ないようにしてしまったことである。近代国家による侵略・支配とは、常にそうしたものである。 侵略・略奪される前に、その人たちがそのなかで生きていた生のあり方を破壊してしまったことを含めて、これらの人たちの「権利」や生活、生涯は尊重されなければならない。 だがそれは、「独立」のような形態によって保障されるものであるとは、必ずしもいえない。 チベット問題