小栗判官(おぐりはんがん)をめぐる人たち ―歌舞伎と障害者―上沼美由紀 小栗判官の物語は、恋の物語、そして障害者の旅の物語としてよく知られている。現存する小栗物歌舞伎としては19世紀初頭に登場した『姫競双葉絵草子』が集大成だが、この芝居は初春歌舞伎の定番として見なされ、明治前半まで頻繁に上演されてきた記録があることからも、新春号で紹介するのにふさわしいおめでたい演目かと思う。 平成12年に国立劇場で上演された時には、鴈治郎と時蔵の錦絵から浮き出たような艶姿が評判になったが、筋書きの背景にあるのはお定まりの「お家騒動」。まず、「お家の重宝」が無くなり、馬芸に秀でた小栗判官は将軍の命により関東へ探査の旅に出る。判官が訪ねたのは謀反を企む横山大善の屋敷。そこには判官の許婚「照手姫」が身を寄せている。大善は都からの上使として現れた小栗に毒を飲ませ殺そうとするが、命がけで親を諌める嫡男太郎が防ぐ。小