複雑系科学の見地から邪馬台国の謎に挑んだ"スーパー医学者" 日本古代史最大のミステリーと言えば、「邪馬台国論争」だろう。中国では魏・呉・蜀の三国が覇権を競いあった三世紀に日本列島に存在したとされる邪馬台国だが、その正確な位置はまだわかっていない。 江戸時代から続く論争の中で、候補地として挙げられた場所は100ヶ所を超えるが、現在では大半の研究者が九州か畿内のどちらかを主張している。2009年に奈良の纏向遺跡で大型の建物跡が発見されたことから畿内説がやや優位に立ったとも言われているが、決定的な考古学上の“証拠”はいまだ見つかっていないのだ。 この難攻不落の謎に、一人の天才科学者が挑戦したのが、『日本古代史を科学する』(PHP新書)だ。 著者の中田力氏はアメリカで臨床医として活躍するかたわらファンクショナルMRIの開発に携わり、さらに複雑系脳科学の研究者として脳における意識の発生の謎に挑んだ“