「当たり前」が消えていく “夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みぢやないか あかねだすきに菅の笠”(民謡『茶摘』) 東海道新幹線は下り大阪方面、山側の風景が観えるE席に指定を取る。東京からおよそ1時間、三島駅にさしかかったあたりで、車窓から鮮烈に輝くグリーンが視界に飛び込んでくる。日本随一の生産量を誇る、静岡の茶畑だ。 もちろん静岡だけでなく、日本各地に茶畑の風景は広がっている。出張がちで新幹線を毎週のように利用する人、帰省のたびに田舎に帰る人は、別段茶畑なんて物珍しいものでもないかもしれない。 だが、そんな日本特有の田園風景が、近年急速に失われつつある。このままでは、日本の「当たり前」がなくなってしまう危険性がすぐそこまで迫っているのだ。 「若者のお茶離れ」「後継者不足」といった言葉は、別にお茶に限った話ではない。だが茶業界においては、今年はコロナのダメージが