地球科学には「過去は未来を解く鍵」と言うフレーズがある。過去に起きた現象を詳しく分析し、その中で働いているメカニズムを明らかにし「物理モデル」を立て、未来に起きる現象を予測する。 未来を予測・制御するのは自然科学が持つ基本的な機能で、理学も工学も医学も基本的には同じ原理で動いている。ところが地球科学だけは他の理系分野と異なり、過去に起きた現象が138億年にわたる宇宙の歴史の中で一度だけ、と言う場合が少なくない。 すなわち、偶然に起きた現象、全く再現性のない事象も科学の対象として扱う点が、数学・物理学・化学などと大きく違うのだ。こうした学問体系から地球科学は「歴史科学」と呼ばれることがある。しかも、再現されるとは限らない過去の現象の中から、共通する性質もしくはメカニズムを明らかにし、未来を予測するベースとして事実と理論を蓄積してきたのである。 この方法論には限界があり、未来では必ず「想定外」