昨今話題に欠かないテーマの本なので、まずは著者2人の紹介から始めよう。グレッグ・ルキアノフはアメリカの教育財団FIREの会長兼CEOで、進歩主義者(リベラル)。ジョナサン・ハイトはニューヨーク大学で社会心理学に精通する教授で、中道派。お互い共和党に票を投じたことはないが、保守派知識人の書物も多く読み学んできた、という。 その2人が問題提起するのは、2013年以降、アメリカの大学内で度々発生する、言論の自由、学問の自由が脅かされる事態についてだ。それも政治権力ではなく学生自身の手によって、である。対立論者の講演に抗議し、激しい妨害活動を行い、キャンセルさせる。大学教員の言葉尻をとらえて糾弾、デモに発展させ、辞職に追い込む。 学生たちはなぜそこまで苛烈な行動に走るのか。彼らの生育環境をベースにその心理メカニズムと事件背景を掘り下げ、追究したのが本書である。特定のイデオロギーを論難する趣旨で書か