山に登る 旅よりある女に贈る 萩原朔太郎 山の山頂にきれいな草むらがある、 その上でわたしたちは寢ころんでゐた。 眼をあげてとほい麓の方を眺めると、 いちめんにひろびろとした海の景色のやうにおもはれた。 空には風がながれてゐる、 おれは小石をひろつて口にあてながら、 どこといふあてもなしに、 ぼうぼうとした山の頂上をあるいてゐた。 おれはいまでも、お前のことを思つてゐるのだ。 山頂が狭い山、 山頂が樹木に囲まれていて展望がない山、 山頂に岩や石がゴロゴロある山などはすぐに思い浮かぶが、 山頂にきれいな草むらがある山は意外に少ない。 だが、私には「天山」がある。 萩原朔太郎の「山に登る」を読むと、 私は「天山」の山頂から稜線へと広がる草原を思い出す。 2行目に、「わたしたちは寢ころんでゐた。」とあるように、 最初は「わたしたち」なのに、 6行目では「おれは小石をひろつて口にあてながら、」とな

