「黒い雨」訴訟の控訴後、記者会見する松井一実広島市長(右)=広島市中区で2020年8月12日午前11時2分、北村隆夫撮影 原爆投下後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で、国と広島県、広島市が12日に控訴し、国の援護対象区域外にいた原告84人を被爆者と認めるかどうかの司法判断は、広島高裁へ持ち越された。県・市は住民とともに援護拡大を求めてきたのに、裁判では住民と争う「ジレンマ」を抱えてきた。国は今回、訴訟とは別に援護拡大の可能性を示すことで、県・市との折り合いをつけた形だ。被爆から75年。住民は高齢化し、提訴後に死亡した原告もいる。国の「妥協策」は住民の理解を得られるのか。 「(すぐに協議がまとまるような)そんな甘いもんじゃないよ」。国が控訴を表明する前夜、政府関係者は広島県や市との交渉について、そう振り返った。