長谷部 憲法と戦争とのあいだには切っても切れない関連があるからです。戦争は基本的には国家と国家の戦いですが、じつは国家という枠組みは突き詰めていくと、私たちの頭の中にしかない“こしらえごと”です。そのこしらえごとの核心にあるのが憲法です。 その本質を鋭く指摘したのがジャン=ジャック・ルソーです。ルソーの「社会契約論」は国家を設立する契約について論じたものですが、志を同じくする人が同じ条項を守ることに同意して新しい共同体を立ち上げる――そういう社会契約によって国家は出来上がります。ところが、国家の設立によって最低限、人々が平和な社会生活を送れる基盤を整えたはずが、国家と国家は依然として自然状態にあるので、人々は大規模な殺し合いを始めてしまう。それが戦争です。 ルソーはこうした事態を解決するためのアイデアをいくつか提案しています。ひとつは、後にカントが『永遠平和のために』にも取り入れているもの