森見登美彦氏は机に向かっているのに飽き飽きしたので、映画を観に行くことにした。 先日の昼休み、登美彦氏は同僚から借りた「ハチミツとクローバー」を読んだ。そして「はぐちゃんがえらいことになっとるがな!」と、喫煙ルームでちょいと唸った。 登美彦氏は映画「ハチミツとクローバー」をなんとしても観なければならなかった。 なぜならば、「観る観る」と言っていたものの多忙のためになかなか観ることができず、職場の同僚から「言行不一致の豚野郎」と言われたからである。おそらくこの場合の「豚野郎」とは、ベイブみたいな愛すべき豚のことであろう。 「そんならヨシ!」と登美彦氏は言う。 そうではなかろうというのが大方の見解である。 心優しき女性編集者から「一人で行けないなら一緒に行きますか」と誘われたこともある登美彦氏だが、もしやうっかり感涙にむせぶところを目撃されては、もう今後死ぬまで言いなりにならなければならぬ。「