「お前、いい加減なヤツだな」「馬鹿野郎!今何時だと思ってんだ!」ナベさんの怒声がまた飛んでくる。 ケアレスミス、ちょっとした遅刻。やる気とは裏腹に、仕事は失敗だらけだった。ストップウォッチ一つ満足に使えない。オープンリールのテープが上手くかけられない。台本の校正も間違いだらけ。毎回、出勤するとお小言で、凹んでしまい、段々バイトがつらくなってきた。 「N先生がNHKでADのバイトできるヤツ探してるってよ」 語学の授業の後、友人に呼び止められた。当時、私は芸術学部放送学科の学生だった。NHKでバイトなんてこれ以上のチャンスがあるだろうか。渡りに船だ。行きますと迷わず答えた。 数日後、渋谷の放送センターの地下の食堂で面接を受けた。 「日曜日が収録、朝8時から。夕方6時には終わるわ。水曜、金曜がリハーサルと準備。午後の来られる時間からでいい。日給は4000円ね」 女性のディレクターで、名前は長与さ