「ゴブラン織が、錯視と何か関係があるの?」 そう疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、大いに関係があったのです。 当時、王立ゴブラン製作所には織物の色について、いろいろな苦情が寄せられていました。その中に「染料を混ぜるとき、ブルーやバイオレットを陰らせるのに使う黒が、濃度不足だ」というクレームがありました(文献【1】より引用)。 シュヴルールはこの苦情について調べ、その原因が製作所で使っている黒色素の品質の問題ではなく、目の錯覚によるものと明らかにしました。それが“色の同時対比”だったのです。 ゴブラン織は17世紀から19世紀にはフランスの重要な産業の一つとなっていました。色の同時対比の本格的な研究は、学問的な興味から始められたというよりも産業上のニーズ(苦情を解決する)から生まれたものであったといえるでしょう。 シュヴルールは数多くの観察と研究を積み重ね、色の同時対比に“ある種の法則
![2つ並んだ正方形、あなたは同じ色に見える? 「客のクレーム対応」で始まった錯視研究とは](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/710924e4b5e4975a3ba44469b89414dda31838eb/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimage.itmedia.co.jp%2Fnews%2Farticles%2F1709%2F04%2Fcover_news016.jpg)