一見複雑に見えるような現象でも,実はきわめて単純な原理に基づいていることは多い。雄コオロギの歌声に誘われていく雌コオロギの行動も,どうやらその1つらしい。 著者は,左右の耳(マイクロホン)と簡単な情報処理機構をもつ雌コオロギ・ロボットを作製した。雄コオロギにあたるのはスピーカーで,ここから,コオロギの歌をまねた断続的な信号音を送る。音源に近い方の耳には大きな音が入るので,その情報をもとに動力のモーターを制御し,スピーカーの方向に向かわせるというものである。本体は簡単にレゴ・ブロックで作った。 こんな単純なロボットでも,本物のコオロギと驚くほどよく似た行動をとることがわかった。たとえば信号の頻度を上げて個々の音を識別しにくいようにすると,ロボットは直線的にしか動けず,目標に到達できない。逆に頻度を下げると今度は曲線的な経路をとり,やはりあまりうまく目標には行けない。ちょうどよい頻度があるわけ
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