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今年の正倉院展に「白葛箱」が出陳されるそうだ。これは植物のクズの繊維を編んでつくられた繊細な細工物である。 クズと言えば、最近は「緑の怪物」扱いされるほどの繁殖力を誇り、開けた土地をあっと言う間に覆い尽くす。日本どころか海外でも侵略植物扱いされている。 だが、古来よりクズから取り出した繊維で編んだ小箱や鞄物などが作られており、繊細で優美な魅力がある。だから正倉院にも納められているのだろう。今でも葛細工の箱は、宮中祭祀や伊勢神宮の神宝として遷宮には欠かせないという。 私は葛細工と言うと、幻の「水口細工」を思い出す。そして、それが消えた理由を考えると、現代の日本のものづくりにも通じる憂いを感じてしまうのである。 水口細工1滋賀県の甲賀市水口地方では、水口細工として葛で編まれた小箱などが、少なくても江戸初期から作られていた。参勤交代を始めとする東海道を旅する人々のお土産として珍重され、シーボルト
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