名古屋グランパスのクラブハウスには、一つの哲学が息づいている。それは、「選手が手ぶらでトレーニングに来て、手ぶらで帰る」というプロフットボールクラブとしての姿勢である。選手たちは日々の練習に何一つ道具を持参せず、おのおのに合わせて完璧に用意された用具をチョイスし練習に励む。終われば練習着やスパイクを所定の位置に置き、シャワーを浴びて帰る。試合日はもちろん、練習においても個人管理の用具は基本的にはない。なぜなら名古屋には、「ホペイロ(ポルトガル語で用具係の意味)」と呼ばれるスタッフが在籍しているからだ。しかも名古屋のホペイロは選手と同じくクラブとプロ契約。日本で唯一のプロホペイロ・松浦紀典さんが務めている。 松浦さんの考えるホペイロの仕事とは、「用具係」の枠には収まりきらない。その大部分は他クラブと同様に所属選手たちが毎日使用するスパイクのケアだが、それ以外にもユニホームや練習着、ボールやカ