2016年にオープンした、市立吹田サッカースタジアム。こけら落としは2月14日のG大阪vs.名古屋 【写真は共同】 2016年にオープンした、市立吹田サッカースタジアム。その竣工式が行われたのは、15年の10月10日のことである。「スタジアム建設募金団体」主催の竣工式を終えた後、スタジアム建設のための募金に5万円以上を寄付した4,394名が招かれた。Jリーグ・スタジアムプロジェクトの責任者である佐藤仁司は、万感の思いで迎えたこの日のことを、こう振り返っている。 「それまでも何度か訪れていましたが、この日はやはり格別でしたね。サポーターの皆さんが、ゲートからコンコースに入って劇場のようなスタジアムを目の当たりにすると『ウォー』という歓声が次から次へと聞こえてくるんですよ。それから、募金をされた方々のネームプレートの前で自分の名前を見つけた人が『あった、あった!』と、まるで合格発表のように喜ん
新スタジアム建設にあたり、元ガンバ大阪社長の金森喜久男がまず着手したのが「同志」を得ることだった 【宇都宮徹壱】 行政だけに頼ることなく、寄付金によって建設費を賄うという新スタジアム建設プロジェクト。その実現にあたり、元ガンバ大阪社長の金森喜久男がまず着手したのが、「同志」を得ることであった。単なる協力者ではない。サッカー界と経済界で、それぞれ大きな影響力を持つ人物である。金森がまず訪ねたのが、JFA(日本サッカー協会)最高顧問の川淵三郎。「サッカー界と経済界が一緒になって民間の寄付でスタジアムを造りたい」という自らの考えを開陳したところ、その場で「よし、分かった。一緒にやろう。Jリーグを作るときも胸躍ったが、これからはこのやり方ですね!」と快諾を得ることができた。2008年7月のことだ。 金森はさらに、パナソニック以外のクラブの大株主(関西電力、大阪ガス、JR西日本)の賛同を得て、いよい
ゴールデンウイーク(GW)2日目の4月30日、静岡県沼津市は好天に恵まれていた。この日、愛鷹(あしたか)広域公園多目的競技場では、J3リーグ第6節、アスルクラロ沼津対鹿児島ユナイテッドFCの試合が行われていた。 村井満Jリーグチェアマンの視察に訪れた、この試合の公式入場者数は2,813人。同節に行われた8試合の中では4番目の数字だが、沼津のホームゲームとしては悪くない数字だ。この日は遠く鹿児島からも、多くのアウェーサポーターが訪れていた。スタジアムに向かうバスの中、車窓からくっきり見える富士山を見た鹿児島の女性サポが「やっぱり桜島とは違うわねえ」とつぶやいていて、妙にほっこりした気分になる。 沼津のホームゲームを取材で訪れるのは2年ぶり。当時の沼津はJFLで、同じくJ3昇格を目指す鹿児島とデッドヒートを繰り広げていた。結果、ライバルに1年先を越されてしまうことになったが、昨シーズンに昇格の
Bチームの最終節。アグレッシブなプレスを掛け、ほぼ敵陣で試合ができた。よりテクニカルなチームでつなぐ力は上だが、当たりに弱く情けない試合も多かった 【木村浩嗣】 11月11日に開幕したリーグが3月18日に閉幕した。12試合を戦ってAチームは2勝3分け7敗の6位、Bチームは3勝3分け6敗の5位。7チーム中の順位なので“下位低迷”ということになるが、気にしていない。最終節にBは2位チームと引き分け(1−1)、Aは3位チームに大勝(8−1)したことで分かる通り、順位は伸びなかったものの内容は全然悪くない。GKからスローでボールを出し、ショートパスをつないで攻撃し、激しいプレスで相手を自陣に押し込むサッカーは形になってきた。 ただ、今季から始めたA、Bの2チーム制の弊害も明らかになった(リンク1参照)。 まずは以前、ここに書いた得点力不足(リンク2参照)。 選抜をせず、登録人数枠(18人)にも満た
関東1部リーグの東京ユナイテッドへの移籍を決断した岩政。その経緯や今後について話を聞いた 【スポーツナビ】 大学卒業後、10シーズンを過ごした鹿島アントラーズで2007〜09年のリーグ3連覇の原動力となり、14年にタイ・プレミアリーグのBECテロ・サーサナへ移籍した岩政大樹。カップ戦タイトルを手土産に、15年にはファジアーノ岡山に加入し、キャプテンとしてJ1昇格に挑んできた。 2年目の昨シーズン、岡山は6位でJ1プレーオフに初参戦し、3位の松本山雅を準決勝で撃破。ファイナルまで上り詰めたが、決勝のセレッソ大阪戦では力の差を見せつけられ、0−1で苦杯をなめた。本人も負けを認めざるを得ない試合。「自分の2年間の挑戦が終わった」とキッパリ言い、岩政は次なる身の振り方を模索していた。 新天地に選んだのは、文京区に本拠を置く関東1部リーグの東京ユナイテッドFCだった。東京大学運動会ア式蹴球部OBクラ
松山空港からJR松山駅に向かうリムジンバスの料金が310円。松山から今治に向かう特急しおかぜの自由席が1470円。列車が来るまでの間、駅ナカのうどん屋で食べるじゃこ天うどんが500円。数字を覚えるのが不得手な私だが、これらの値段は完ぺきに脳裏に刻まれている。それくらい、今治通いを続けてきた。FC今治の取材を始めたのは2015年だが、この街に来るのが何度目なのか、もう覚えていない。が、少なくともクラブのJFL昇格が決まってから訪れるのは、今回が初めてである。 1月27日、今治市内にて、FC今治の2017方針発表会が行われた。今年の会場は今治港近くに昨年オープンした、みなと交流センター「はーばりー」。地域リーグ時代の去年や一昨年から、一気にグレードアップした感がある。駅から徒歩で15分以上の距離があったが、港につながるアーケード街をゆっくりと歩いてみた。相変わらず、シャッターが閉まったままの店
これまで指揮したチームを3度のJ1昇格に導いてきた前モンテディオ山形監督の石崎信弘が、九州リーグ(5部相当)に所属するテゲバジャーロ宮崎の監督に就任した。 1月5日14時に公式サイトを通じてリリースされたこの情報はSNSを通じて瞬く間に拡散。真偽を確かめたい人たちの思いはオフィシャルサイトへのアクセスにつながり、結果的に14時半ごろまでサーバーはダウンを余儀なくされた。広報担当者の話では「元々アクセス数は高いサイトでしたが、その1カ月間の総アクセス数がこの日1日に集中した」という。 多くのサッカーファンに名前を知られている石崎監督が、J2の山形との契約満了後、どのような経緯でJFL昇格を目標にする宮崎の監督に就任することになったのか。監督業にこだわる理由は何なのか。1月16日のチームの始動直後にうかがった。 ――山形との契約が満了になったあと、どういう状況だったのかを教えてください。 まず
コパ・スダメリカーナ決勝のため、飛行機でコロンビアに向かっていたシャペコエンセの選手たちが悲劇に見舞われた(写真は11月16日のボタフォゴ戦のもの) 【Getty Images】 2016年11月27日午後(現地時間、以下同)、サンパウロにあるパルメイラスの本拠地は4万人を超える観客で超満員だった。ブラジル全国選手権1部、第37節のシャペコエンセ戦。この試合でパルメイラスが引き分け以上なら、22年ぶり5度目(前身の全国大会タッサ・ブラジルを含めると9度目)の優勝が決まる。シャペコエンセは完全な“敵役”で、選手たちは地元観衆から容赦のない罵声を浴びた。 前半25分、パルメイラスが先制し、さらに追加点を狙う。このような厳しい状況でも、シャペコエンセの選手たちは全くおじけづいていなかった。再三、危険なカウンターを繰り出して相手ゴールを脅かす。結果的に0−1で惜敗したが、クラブの歴史、実績、実力な
11月16日、今季のJFLを年間通算順位3位でフィニッシュしたアスルクラロ沼津のJ3昇格が正式に認められた。地域に根ざした総合型スポーツクラブとして、Jリーグ開幕前夜の1990年に設立。それから26年目にして、ついにJクラブとなることに、クラブ関係者や地元サポーターは、さぞかし万感の思いを抱いていることだろう。 さて、沼津が3シーズンにわたって戦ってきたJFLというリーグは、J1から数えて4番目という位置付けにあり、「アマチュア最高峰のリーグ」と呼ばれている。このカテゴリーには沼津のように、将来のJリーグ入りを目指すクラブがある一方、今年の天皇杯で旋風を起こしたHonda FCのように、あえてJリーグを目指さないクラブもある。この「Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ」を長年にわたって追いかけたノンフィクション作品が、このほど発売された、宇都宮徹壱著『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)
8月最後の週末、天皇杯(第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会)がスタートした。どこの会場で1回戦を迎えるか、毎年この日を楽しみにしているのだが、今回は取材先の今治から特急しおかぜに乗って丸亀駅で下車。Pikaraスタジアム(香川県立丸亀競技場)で開催されるカマタマーレ讃岐(J2)対FC今治(愛媛県代表)のゲームを取材することにした。この顔合わせの意義については後ほど触れることにして、まずは今大会の天皇杯についておさらいしておくことにしたい。 天皇杯は前回の95回大会で、大きなレギュレーションの変更があった。まず、高校やユースなどの第2種加盟登録チームの参加が不可となり、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出場する4チームは4回戦からのシードとなった(今回、該当するサンフレッチェ広島、ガンバ大阪、浦和レッズ、FC東京は、いずれもラウンド16までに敗退となったが、このレギュレーションが適応
スタジアム建設予定地の近くにある商業施設でファンと交流するFC今治の選手たち。今季は首位を独走中 【宇都宮徹壱】 「ここに5000人収容のスタジアムが建つんですよ」──2月19日、FC今治の方針発表会が行われたあと、スタジアムの建設予定地を見渡しながら岡田武史オーナーはそう語った。あれから5カ月。再び建設予定地を訪れてみると、スタジアムの輪郭はもとより土台さえも見当たらず、いささかの落胆を禁じ得なかった。そんな私の表情を察したのだろう。同行してくれた今治.夢スポーツの矢野将文社長は、ここまでの作業がいかに大変なものだったのか、実感を込めて説明してくれた。 「以前、来ていただいた時には、周囲には木がたくさん残っていたと思います。伐採後に根をユンボ(油圧ショベル)で引き抜くのは、とても骨が折れる作業なんですね。ですから『ようやくここまで来たか』というのが、私の率直な感想です」 岡田オーナーの「
1936年、愛知県の鳴海球場で日本初のプロ野球の公式戦が実施されて以降、日本プロ野球は、幾多の困難を乗り越え、さまざまな変貌を遂げながら繁栄を続けてきた。その間、選手数、そしてファンの数を着実に増やしてきたが、近年、減少の傾向にあるのが、地方球場での開催試合数である。2016年は計27球場で41試合を開催(予定を含む、すでに3試合中止)。これは発展か、それとも衰退か――。地方開催に焦点を当て、日本プロ野球界の課題を見つけたい。 プロ野球80年。戦前の黎明期を経て、戦後まもなくには球場の建設ラッシュが起こり、2リーグ制元年の1950年には全国津々浦々、地方球場での開催試合の数は計300試合以上にも上った。だが、52年のフランチャイズ制度の正式導入以降は各球団の本拠地開催が基本となり、地方開催は一気に減少。60年の地方開催は、わずか10試合となった。 プロ野球が日本社会の娯楽に定着していく中、
昨年9月に開業した「ゼルビアキッチン」。練習を終えた選手たちが、地元の人々と同じ空間で食事をしている 【宇都宮徹壱】 小田急線の「町田市の東の玄関口」鶴川駅。急行が止まらないのに、1日の平均乗降人員が6万8000人を越えるこの駅は、FC町田ゼルビアを取材する際の起点となる。駅構内の跨線橋(こせんきょう)には、週末の試合結果とJ2の順位表、そして次のホームゲームの日程が貼り出されてあるのだが、果たしてどれだけの通勤・通学客が気にしているのだろうか。今季、4シーズンぶりにJ2復帰を果たした町田は、誰もが予想しなかった素晴らしいシーズンを送っている。セレッソ大阪との開幕戦には0−1で敗れたものの、その後は5連勝を含む11戦負けなし。第9節には、クラブ創設初となるJ2首位に立って周囲を驚かせた。 もっとも、今回私が向かう先は町田市立陸上競技場(通称、野津田)ではないし、今季の町田の強さを探ることが
ホームで松本に0−4で敗れ、サポーターからブーイングを浴びるヴェルディの選手たち。厳しい戦いは今季も続く 【宇都宮徹壱】 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ゴール裏から激しいブーイングと怒号が鳴り響いた。選手たちがあいさつに向かうと、ゴール裏の住人たちは抑えきれない感情を、言葉にならない言葉でぶつける。当事者ならずとも、いたたまれなくなる光景がそこにはあった。東京・味の素スタジアムで行われたJ2リーグ第12節、東京ヴェルディ対松本山雅FC。ともにチームカラーがグリーンであることから「グリーンだよ!全員集合!」と銘打たれた両者の対戦は、アウェーの松本が4−0で圧勝。普段は忍耐強いことで知られるヴェルディサポーターも、この日の試合内容と結果には、さすがに我慢ならなかったようだ。 松本のユニホームがグリーンになったのは、Jリーグ黎明期に圧倒的に強かったヴェルディにあやかってのものであったと、ある
昨年、大宮アルディージャを応援しているスコットランド人にインタビューする機会があった。もともとはレンジャーズのファンで、週末は日本人の奥さんとよくNACK5スタジアム大宮に通っているのだそうだ。それにしても、自国のフットボールにプライドを持つスコットランド人が、なぜJリーグに夢中になっているのだろうか。彼の答えは「JリーグにはJリーグの魅力がある」というものであった。 「Jリーグは、スコットランドのリーグに比べれば、確かに歴史は浅いかもしれない。でも僕から見ると、ものすごく成長しているなと感じるね。選手のテクニックに関しては、むしろスコットランドよりもアベレージは高いんじゃないかな。NACK5スタジアムはちょうどいい大きさだと思うし、ゴール裏には僕みたいな外国人もけっこういる。そういうフレンドリーな雰囲気も気に入っているよ」 「海外の主要リーグに比べて、Jリーグはまだまだ」という意見をよく
選ばれし者たちの試合前のウォーミングアップ。“たらたらやりやがって”と怒るところだが、このくらいはスペインでは普通。モチベーション高く試合には勝ったので許す 【木村浩嗣】 「うちの●●●●の家での態度がなっていません。私の言うことをまったく聞かなくて、どうしていいか分からないんです。サッカーを罰にするのは嫌ですが、今日の練習には連れていかないでおこうと思うのですが……」 この間、こんなお母さんからのメッセージが届いた。子供は親の付き添いがなければ練習場にも来られない小学生である。そんな子が手に負えないとはかわいらしい相談だな、と思ったが、この人はおそらく20代の若いお母さんだからそれもしょうがないのかもしれない。こう答えた。 「大変良いと思いますよ。私も態度が悪い子はプレーさせません。つまりあなたのやろうとしていることはチームの方針と同じなわけで一貫しているのです。ですから遠慮なく罰を与え
IAIスタジアム日本平でのJ2開幕戦(清水エスパルスvs.愛媛FC/0−0)から一夜明けた2月29日、清水駅からバスで40分近く揺られて三保にある清水エスパルスの練習グラウンドを訪れた。午前10時、前日の試合に出場した選手たちのリカバリーが始まる。監督の小林伸二は、やたらアクションを交えながら、選手と一緒に走っていた。どうやら昨日の試合の感想を、ひとりひとりに伝えているようだ。熱血でありつつ細やか。そんな新しい指揮官に対する、選手たちの評価も概して好意的だ。 「距離感が近いですよね。何か気付いたら、すぐに選手を呼んで誰とでもしゃべる。積極的にコミュニケーションをとってくれるので、すごくやりやすいです」(大前元紀) 「守備の意識が変わったかな。今までの清水は、あまり後ろに人数をかけていなかったけれど、今季は(攻められたら)まずは全員で戻ろうと。J2で長く経験している監督なので、守備だけではな
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く