→紀伊國屋ウェブストアで購入 「”音楽家には国境がある”」 「音楽に国境はない」というのは真実だろうが、過去の歴史をひもとけば、「少なくとも、音楽家には国境がある」。これが、本書(中川右介著『国家と音楽家』七つ森書館、2013年)の重要なメッセージのひとつである。本書には、政治に翻弄された音楽家たち(フルトヴェングラー、カラヤン、トスカニーニ、カザルス、ショスタコーヴィチ、バーンスタイン、等々)がたくさん登場するが、「天下泰平」の世ならともかく、20世紀の激動の時代を生き抜いた音楽家たちの生涯を追うと、やはり「音楽家には国境がある」と言わざるを得ない。 著者はすでにこのテーマで何冊か本を書いているので、ヒトラー政権とフルトヴェングラーの微妙な関係、当時ナチ党員でありながらワーグナーのあるオペラの演奏上のミスでヒトラーに嫌われたカラヤンの話などをよく知っている読者も少なくないかもしれない。