「最初は……道ばたで、高校生の女の子が書いたと思われる、手紙を拾ったのがキッカケなんです。 封筒にも入ってなくて、ただ中身だけ、ぽろっと落ちていたんです。誰が誰に向けて書いたのかも分からないけれど、内容的にはラブレターでした。6、7年前のことです。 僕はその頃、映像作品を作っていたんですが、人間が考えて作りこむものって限界があるのではないか、と悩んでいて…。本物の手紙を拾って、ハッとしたんです。これすごいな、ヒトの本質だなって。 その後、古本店で働く機会があって。持ち主の『痕跡』の残った本が興味深くて、収集していった…、といういきさつです」 元の持ち主の痕跡が残る本を集めた展示……『痕跡本フェア』主宰・古沢和宏さんは、そう言って、本たちを見せてくれた。 (text by 大塚 幸代) 「これ、Q&A方式の本に、いろいろと書き込んであるんですよ」 ――うわ、痕跡どころか、書き込みまくりですね