惜別 河合塾講師・牧野剛さん 9月に名古屋市であったしのぶ会で突然、教え子4人が遺影の前で猥歌(わいか)を歌い始めた。牧野さんに連れていかれたビアガーデンでともに歌ったという。その一人、映画監督の井上淳一さん(51)は「規範やルールを引っぺがしたところにあるものを見ろと言われた」と振り返る。教えを守り、福島の被災者を追ったドキュメンタリーを撮った。 名古屋大で全共闘運動に没頭した後、1976年に30歳で河合塾の現代文講師に。84年の共通1次試験の問題を的中させ、名をはせた。同塾の調査では浪人生の数は91年にピークの約30万人。数百人を前に、ビール缶を片手に授業した。 授業では、受験テクニックよりも作品の読み方や時代背景の説明にこだわった。高校の中退者を対象にしたコースや、大学の専門家を招いた研究所の設立にも尽くす。予備校に文化を吹き込んだとも言われた。 予備校は受験産業だからこそ、自由だと