「なぜ自然を研究するのにコンピューター・シミュレーションを使うの?」と聞かれることがある。確かに。こういう率直な疑問が浮かぶのも当然だと思う。というわけで今回は、コンピューターを使った研究ってなんなのか、ちょっとマニアックにお話してみたい。 森のことを知りたいと思えば、森に行ってみるのは当然だ。そして、森にどんな種類の木が生えているのか、どのくらいの大きさに成長しているのかを観察する。こういうふうに、生態学という学問は、フィールドに行って研究するのが基本だ。コンピューターを使うときは、表計算ソフトにデータを打ち込むときや、論文を書いたり、プレゼンの資料をつくったりするときだけ。こういう生態学の研究者も多いことだろう。 しかし僕は、そんな生態学に、コンピューター・シミュレーションというあまりなじみのない道具を持ち込むことにした。その意義を説明する方法はいろいろあるけど、ひとつだけ挙げるとする